ロシア政治と宗教
1投稿者:ヽ(´ー`)ノ  投稿日:2022/05/07(土)17:21:01
下斗米伸夫『ロシア政治と宗教』 - 「東洋学術研究」第41巻第1号
6投稿者:ヽ(´ー`)ノ  投稿日:2022/05/07(土)17:32:12
しかし世論レベルではやや低下します。99年ぐらいの世論調査を見ると、正教、つまりオーソドックスは意外に少なく55%、これに対して31%は無宗教だと答えています。
あるいは99年のモスクワ大学の調査によると、世論調査の43%までしかオーソドックスとはいわない。しかもオーソドックスの人でもきちんと教会に行く人は多くはないわけです。
にもかかわらず、97年の法律その他では、正教に非常に大きな地位と役割を与えているわけです。

次に、ロシアにおけるユダヤ教の問題とは何なのかというのはたいへんやっかいなことです。
実は千年前にキエフにルーシができる頃に、いまのチェチェン共和国のちょっと南辺りですが、ハザーリア、ハザール王国という国があって、トルコ系の民族の国家ですが、ここにたしかにユダヤ教徒が入って、国教化したのです。

ユダヤ人教会に属する、グシンスキーという人物、ロシアの独立系のテレビ局およびメディアを握っていたリーダーですが、あるいは彼とは対抗しているベレゾフスキーという金融と流通部門をコントロールした人物がエリツィン政治のキー・ファクターとなっておりました。
96年のエリツィン選挙というのは実は彼らの持っていた金融資本、それからメディアの力をもってエリツィン政権二期ができたということはいまでは常識です。
これ以上になると複雑な問題が出てきます。逆にそのことゆえに、いまのロシアのメディアとかあるいは反対派のメディアの中で、反シオニズムといういい方でエリツィンおよびその周辺に対する批判勢力が生じます。
そしてその片方の極では反ユダヤ主義になって出てきたのです。
7投稿者:ヽ(´ー`)ノ  投稿日:2022/05/07(土)17:33:25
ちなみに現在のプーチン政権はどうしているかというと、グシンスキーとベレゾフスキーという二人の金融王たちに対して攻撃していることはご承知のとおりですが、同時にユダヤ人教会を二つに割って、より伝統的な正統派ユダヤ教徒たちを重用して、この二つのグループを分断することにプーチンは成功しました。
そういうかたちでプーチンはディバイド・アンド・ルールで臨んでいるわけです。

次に「非伝統的宗教」ですが、これはソ連崩壊後あるいはその前ぐらいから、滔々(とうとう)たる勢いで入ってきました。
エホバの証人をはじめ、ルター派、プレスビテリアン、メソジストなどさまざまなグループが入ってきたわけです。
現在当局は「全体主義セクト」、あるいは危険なセクトというカテゴリーを作り、こういう宗教団体に対しかなり制約的な動きに出ているわけです。
制約的とはどういうことかというと、法的にはこういう伝統的宗教団体も登録して15年間は試行の期間となる。
したがって登録したとしても、土地の所有や銀行口座開設、文献の配布とか海外から司祭を呼んで説教するなどということに対し、かなり組織的な制約が入っているわけです。
これはちょうどロシアの政党作りと同じなのですが、宗教組織というものは3つの支部と各支部に10人以上のロシア人がいないと登録させない。
すなわち外国人がやってきて勝手にやっているようなものは認めない、というようなことになっています。
例えばモルモン教徒はトムスクで土地を取得することを禁止されました。こういう例はきりがないのですが、その背景に正教と地元権力のさまざまな制限的な態度があるわけです。
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